何故に台湾は俺を入国させない!

俺は今まで台湾に行ったことがない。

中国には4、50回。香港にも10回や20回は下らないのに台湾には一度たりとも行ったことがない。

その原因は果たして「縁」だけの問題なのであろうか。

北京人の嫁と新婚旅行に行こうとした時、「台湾には中国人は台湾には入れない」と初めて知った。

 

さて、1999年6月2日、俺は日本の有名パソコン雑誌「週刊ASCII」の命を受け、台北にてコンピューター・フェスティバルの取材をすべく、成田発16時55分CX451便に飛び乗る!

・・・予定であった。

しかし!

成田空港でのキャセイの受付のねえちゃんは、俺の中華人民共和国のハンコだらけのパスポートを見て非情にもこう言った。

「ビザはお持ちですか?」

「日本人は要らないんじゃないの?」

「はい2週間以内の滞在でしたら日本人はノービザで大丈夫です」

「ほなたった4日間の渡航なんて全然問題ないやん! あ、わかった。俺があまりにも中国本土への渡航が多いもんやから台湾政府は俺をスパイかなんかやと思とんとちゃうん! 悪いけど俺は政治には興味ないで。選挙も行ったことないし・・・、あ、これ妻もいっしょ。国籍が中国やと選挙ないしね。え?そんなこととちゃう? ほななんでやねん。あ、わかった。俺が今年じゅうに北京に移住すると言う噂を聞きつけて、台湾政府が俺を要注意人物に指定した! え?そんなわけないやろ? あ、ねえちゃん、ひょっとしたら俺のこと、もう中国国籍に替えてしもた思とんちゃうん! え? パスポートが日本のやんけ? あ、そりゃそうじゃ・・・」

「はい、ビザ免除にはパスポートに半年の有効期限が必要ですが、お客様のパスポートの有効期限は一日足りません」

「げっ!」

しばしの沈黙の後、俺はこう答えた。

「一日ぐらい何とかしてー言うてーなぁ」

ここが中国的である。カウンターで粘りに粘って台湾のイミグレーションに問い合わせてもらう。

待たされること1時間。答えは「恐れ入ります。やはりお乗せするわけにはいきません」

「もうお前には頼まん!」

バンとカウンターを叩いた俺は、中国式にとりあえずいろんなところにコネのある友人を探す。中国では困った時にはまず友人を探すのだ。

「ファンキーさん、領事館ももう閉まっちゃってるんで、とりあえずは明日になりますわ」

しかも明日ビザを申請しても明後日やっとビザが下りて、それではパソコン・フェスティバルが終わってしまうのじゃ。

しかも俺は今晩、台北であのBEYONDのメンバーと秘密プロジェクトの打ち合わせのためにアポをとっている。

「どんな手を使ってもいい。今晩じゅうに台北に入れるように手配しろ!」

「ファンキーさん、それ無理ですよ。ここは中国じゃないんですから・・・」

万事休す・・・

とぼとぼと今乗って来たばかりの成田エクスプレスに乗るべと歩いていると、ふとひとつの考えが閃光のように浮かんで来た。

「ここは中国じゃないっつうことは、中国行けば何とかなるっつうこっちゃ!」

俺は天才である。すぐさまカウンターに引き返してこう言った。

「このCX451って台北経由、香港行きですよね。よし、このまま台北で降りずに香港まで行く!」

締め切り前のゴタゴタの中、押し問答の末機内に飛び乗った。

続く・・・