ファンキー末吉とその仲間達のひとり言

----第52号----

2001/11/29 17:37


S社長の仕事はいつも急である。
「26日ヒマ?じゃあドラム叩いてよ」
まあいつものことなので許す!
「じゃあ前日にリハーサルね」
リハーサル?
聞けば今度はレコーディングではなく、ライブらしい。
陳琳の新譜発表記者会見で1曲演奏すると言うことだ。

「記者会見?俺服持ってないよ」

Gパンは北京での暴飲暴食のため穿けなくなってしまい、
ジャージと北京用の防寒着しか持ってない。
かろうじてあるのは、先日ファンキー松田のライブで来て、
「パジャマみたい」と言われた黄色の上下だけである。
ちなみにROCOCOの記者会見で
MIEさんと共にこの服で壇上に上がった俺を見て、
うちの事務所では
「今後事務所が用意した服以外でテレビに出るのは禁止」
と言うことになっていると言ういわく付である。

そう言えば先日常洲で行われた数万人の野外での中央電視台の公開録画、
ここでも結局ステージ衣装はこの黄色の上下で、
アホ面さげてコンガを叩く姿を数億人の中国人が見ることとなり、
Jazz-yaの従業員にまで「サインして下さい」と言われるようになった。
「まるでラテンの人みたいでしたよ」
ラテンの人はこんな黄色の上下は着ませんって・・・

さて、リハーサルの当日となり、
いつものようにスタジオに行くと、張亜東がいた。
フェイ・ウォンのヒット曲などを数多く手がけた
名実共に亜細亜No.1のプロデューサーである。
「ファンキー、この曲なんだけど、お前ならどう叩く?」
レコーディングなの?
S社長の仕事はいつも突然である。
リハーサルの前に彼のレコーディングを入れていたのだ。

それにしても最近の科学の発達は目覚しく、
彼なども自宅のプロトゥールスで作ったデータをCD-Rに落として、
そのままスタジオに持ってきてドラムを録り、
それをまたCD-Rに持って帰って自宅で仕上げる。
便利な世の中になったもんだ・・・

1回目は音決め、2回目は本気で叩いて1発OK!
美空ひばりさんは、テープが回ったら1度しか歌わない
と言う噂を聞いたが、そんな域に達するよう日々精進である。

すぐ終わったのでそのままレコーディングスタジオでバンドのリハーサル。
ギターはそのまま張亜東が弾く。
思えば次の日演奏する陳琳のヒット曲も彼の作曲、アレンジ、プロデュースである。
そしてもうひとりのギターは・・・

前号でも書いたこの会社の新人、曲世聡。
ぬぼーっとした風体でアコースティックギターを抱えて来た。
何を着ても似合わんし、何を持っても似合わん・・・
それなのにあんな美人の彼女がいるなんて・・・

ま、いい。
そつなくリハーサルを終えて翌日の本番。
演奏は全然心配してないが、衣装が心配である。
とりあえず黄色の上下の他に、
安田のタンスから目ぼしい服をいっぱい持って行く。
しかしS社長から全部ダメ出しを受け、結局黄色の上下になってしまう。
「借りて来たみたいでファンキーさんらしくないよ」
とS社長は言うが、実際借りて来たんだから仕方がない。

リハーサル予定時間が過ぎても張亜東は来ず、
「そりゃミュージシャンが11時入りっつうたら起きられないわなあ」
と当のS社長自身が全然焦りもせず、
会場時間が近づいても誰が焦るわけでもなく、
ぎりぎり到着を待ってリハをやり、何とか本番を迎えることが出来た。
バンドはステージの上だが、
張亜東だけは特別にPA席と照明席の間の花道に
客席を隔ててバンドと向かい合うようにセッティングしてある。
まあ彼は言わば
一時期の小室みたいなもんだからフィーチャリングしているのだろうが、
演奏が始まるとそこが記者達にとって一番オイシイ場所なので、
張亜東の後ろに記者達がどどーっと陣取って陳琳を映すので、
当の張亜東本人が逆に全然目立たないのが笑った・・・

ドラムを叩きながらふと隣を見ると、
その曲世聡が相変わらずぱっとしない風貌でギターを弾いている。
服装は・・・・

なんとジャージである!

アホか、こいつ・・・

でも晴れの舞台で緊張することもなく、
相変わらず全然ぱっとしない風貌で淡々とギターを弾くこいつが
少しだけ、いや結構好きになった・・・

ファンキー末吉


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