ファンキー末吉とその仲間達のひとり言

 ----第24号----

2000/08/26 07:40

子供が中国人になって帰って来た・・・

アメリカから帰って来てから、
嫁は北京の実家に預けている子供たちを迎えに行っていた。

現在嫁は日本の国籍を申請中で、
これって審査官には非常に印象の悪いことらしい。
「あんた日本人になりたいって申請しながら、日本にいないじゃないの。
日本人になって日本に住みたいってのはウソなのね」
と言うことらしい。
つまり、俺のように世界を飛び回る日本人など、
この日本国には必要ないと言うことじゃ。
実際、審査期間中に70日以上海外に出ると、
この人は日本に住むと言う意思が無いとみなされるらしい。

その他軽犯罪と言えど審査期間中に起こすと、絶対に受理されない。
これはまあ、「日本国民たるもの犯罪を犯すような輩はいらん!」と言うことである。

先日、レコーディングの帰りに、明治通りの新宿あたりの渋滞で、
ラリった若者達の車にからまれた。
いきなり運転席のドアを開けて来て、
「何見てんだよ、コノヤロー」
と来る。
運転していた竹越の話によると全員酒臭かったと言うが、
酒だけであれだけ大暴れしないだろう。
何かクスリも併用してたに違いない。

何を聞いても答えない俺たちに、
奴らは俺たちの車のKeyを抜いて捨ててしまおうとしたが、
俺はすかさずギアをローに入れ直し、抜けないようにしてにらみ付けた。
若造が3人、こちらにガンを飛ばしていたが、
俺の人相がやはりどことなくただもんじゃないと感じたのか、
「見てねえんだな。見てねえんだったら許してやらぁ」
と退散した。
警察に電話しちゃれと携帯電話を握り締めていたのが
スタンガンかなんかに見えたのかも知れない。

どっちにしろこんな輩こそは日本国には必要なかろう・・・
ちゃっかり110番に通報しといたが・・・
俺は右翼の宣伝カーを見ても、
「うるさいんですけど法には触れないんですか」
と車の番号を通報するイヤな男である。

そんな話はどうでもよい。
成田に嫁を迎えに行った。
ゲートから出てきたのはまぎれもなく中国人になった子供がふたりであった。

3ヶ月も向こうにいれば日本語は全て忘れ、
北京のジジババに着せられた服もどことなく中国的と言えば中国的だが、
いきなり全ての言語が中国語となり、
それにつれ、表情までどことなく中国的になる。

下の子供は2歳なのでまだ片言だが、
それでも中国語である。
理解不能な言葉が多いが、
それを上の子供4歳が通訳する。
この子には完璧に理解出来るらしい・・・

かくして新しい家庭(俺にとってはそんな感覚)が始まった。

X.Y.Z.の韓国公演がキャンセルになり、
その前にくっつけていた、タイプロジェクトの記者会見が延期になり、
ぽっこり空いたスケジュールを見て嫁が、
「じゃああんた子供たち見といて!私遊びに行くわ」
と突然の主夫生活を余儀なくされる。

えりちゃん、さとくん、と呼んでいた昔は今、
京京(ジンジン)、天天(ティエンティエン)である。
一生懸命下の子を呼んでたら上の子が返事をしてたりなど日常茶飯事である。
「何が食べたい?」から「公園に行く?」まで全部中国語なのも不思議な感覚である。
かと言って「そんなことしてるとママに叱られるよ」の「叱る(罵)」と言う言葉は通じない。
子供用に「怒る(生気)」と言ってあげなければならないようだ。
かと思ったら夏風邪をひいて「不通気!不通気!」と意思表示するのがよく理解出来ない。
「どう言う意味なの?」と聞いてやっと「ああ鼻が詰まってるのか・・・」と理解する。
この上、下の子のもっと特殊な赤ちゃん言葉が来るので大変である。
何か喋っていると必ず上の子を呼んで通訳してもらう。
この通訳も中日辞典ではなく中中辞典なので大変である。
ついでに「発音違うよ」と正しい発音を教える。
俺の発音が正しくなければ一生それで覚えてしまうので緊張する。

そのくせ金曜日の7時になると
「ドラエモン、ドラエモン」とこれは日本語である。
3ヶ月北京に行ってても金曜7時にドラエモンがあることは忘れてないのである。
テレビと言うのはなんと偉大であることか・・・
日本語ならまかせとけ!
ちょっと関西訛りで正しくはないが胸を張って教えることが出来る。

一日子供たちと暮らすと、
最初慣れてなかった子供たちも、
「ああこの人はママと違って何やっても怒らないないんだ」
とわかるらしく、どんどんわがままになってくる。
「わがまま言うんじゃない!」の「わがまま(任性)」
と言う言葉から教えなければならないので大変である。

せっかく飯を作ってやってもポテトチップスばっか食って飯を食わない。
「どれどれ、こんなおいしいのにねえ・・・」
こうやって主婦は太ってゆくのね・・・

じゃあおやつは近所のおいしいケーキ屋さんに行きましょう。
そこで暴れまわって言うことをきかないふたりを中国語で叱り飛ばす。
近所の人は俺をどう見ているのだろう・・・
結局一口しか食べないケーキを俺が全部たいらげる・・・
明日はX.Y.Z.の2ndのジャケット撮影なのに・・・

夜は夜で子供を寝かしつけたらチューハイで一杯やる。
つまみは晩飯の残り物である。
また洗い物が増えるのもイヤだし、残すのももったいないから全部食べる。
こうしてキッチン・ドランカーとキッチン・デブが増えてゆくのだろう・・・

世の主婦達に合掌・・・

ファンキー末吉


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