ファンキー末吉とその仲間達のひとり言

----第141号----

2008/09/18 (木) 15:14

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「ロック魂Tシャツ」の物語

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早いもので親父が他界してもう1年。
父の一周忌のため一時帰国した。

葬式ではちゃんと喪服(服道楽だった親父のを拝借)で正装したが、
前回の四十九日では喪主が普段着だったのでえらい騒ぎになり、
結局果物を配達してもらった幼馴染の果物屋に
「ついでに何かお前の黒い服も配達せえ!」
と言って事なきを得た。

人間とは学習する動物なので、
今回は北京からちゃんと黒いTシャツでやって来た。
ズボンもちゃんと黒いジャージである。
上下黒なら何にも問題はあるまいと思ってたら嫁が、

「そんな服で行く気なの!!すぐに着替えなさい!!キーッ!!」

この服なんやけどなあ・・・アカンかなあ・・・

ちゃんと黒いTシャツで文字も白やからワシとしてはかなり自信持って選んで来たんやけどなあ・・・

嫁に耳をひっぱられて黒い服を買いに行き、
どったんばったんでやっとお寺に着いた。
親戚一同は高知からマイクロバスで乗り付けている。

どうしてマイクロバスかと言うとこう言ういきさつがある。
高知の親戚代表の明子おばちゃん。
名前の通りとても明るいおばちゃんから電話がかかって来た。

「明日のお祭りのことやけんどねえ・・・」

高知ではどうも「一周忌」のことを「お祭り」と言うらしい。

「あんたぁ、どうするが?高知から親戚がこじゃんと行くがやけんど、
どうせやったらマイクロバスでも借りるかえ?」

「こじゃんと」とは「たくさん」という意味である。
このおばちゃん、東京から来たスタッフにカツオのタタキをふるまった際、
結局一言も喋っていることが理解されなかったという武勇伝を持つ。

「うちの知り合いが安っすう貸してくれる言ゆうけんど、
どうする?おまんが全部払うかよ?」

まあつまり親戚の分のマイクロバス代はワシが出せぇと、
それが高知のしきたりやと。
まあよかろう。

「坂出の親戚からぎっちぃ電話かかってきゆうでぇ。
そっちにも電話しちゃりぃやぁ」

かけてみると、
「覚くん、坂出のやり方ではな、
来た人に何かおみやげ包まないかんきんな、
とりあえず人数分そうめん注文しといたきんな」
主催地の坂出のしきたりで言うとそれもワシ持ちである、と。
ま、それもいいでしょ。

かくして「お祭り」が始まる。

葬式の時はさすがに神妙であったが、
人が死んで一年にもなるとさすがにそうは神妙ではない。
にこやかに、そして騒がしく雑談に花が咲く。
親戚とてこんな機会でもなければ一同に会するチャンスはないのである。

そして「お祭り」のフィナーレ、酒盛りである。
その酒代ももちろん言わずと知れたワシ持ちである、と。
相当な出費であるが、
ワシは何となく嬉しい気分になって来た。

うちの親戚は仲が悪かった。
(ワシが親戚と仲が悪かっただけか?)
昔の日本のことだから兄弟も多く、
親父がガンでもう長くないと聞いて、
ワシはいろんな親戚に会いに行った。

向こうはテレビで見たり
噂を聞いたりしてワシのことを知っているが、
ワシにとってはまるっきりの初対面である。

「すみません、ところでうちとはどのような関係の親戚なんですか?」

一言に兄弟と言っても、
ある人は母親を同じくする種違いの兄弟じゃったり、
またある人は父親を同じくする腹違いの兄弟じゃったり、
それはそれはややこしい。

しかし蓋を開けてみるとそれがこうして一同に会している。
親父も草葉の陰で喜んでいることじゃろう。

ある人はこう言った。

「盆だ法事だ言うのは、
死んだ人がそれをネタに親戚みんな集まって仲良うせいと言うこっちゃ」

ほんまじゃのう、ほんまじゃのう・・・と酒を飲む・・・

ロック魂Tシャツなんて出て来んやないかい!!
いえいえ、ここから話が続くのです。

服装に無頓着なワシは、
ひとつの服が臭くなるともうひとつの服を着て
その服を洗ってるうちに着ている服が臭くなると
またその洗った服を着て・・・
というローテーションが常である。

ゆえに先日のロックTシャツはまさにこの日着るべき服なのであった。

さてそんな今日この頃なのであるが、
実は子供たちを来月から八王子で育てようと、
高知の学校に転出の書類をもらいに行こうとしたその時、
お袋が血相変えて

「あんたぁ!!まさかそんな服で学校行くんかね!!」

別に冠婚葬祭やあるまいし、学校行くのに普段着ではいかんかね・・・
普段着は普段着でも、
お袋はどうしてもワシに襟付きのちゃんとした服を着させたいらしい。

自慢ではないがワシ、
服には無頓着なくせに、人が着ろと言う服には拒絶反応が強い。
おかげで襟付きの服なんぞ着たことがないのでよけいに拒絶感が強い。

またお袋はそういうワシに拒絶感が強いと来たもんだからキーキー言う。
それぐらいのことでケンカするのも大人げないのじゃが、
ワシは法事で襟付きの服を着てやったことだけでも感謝されたいと思っているほどなので、
ここにふたりの感情は平行線どころか異次元のところに行ってしまっていて、
この言い争い、どうにも決着がつくことは難しい。

「あんたじゃなく恵理が笑われるんやから!!」

と娘の名前を出してまでワシを思いとどまらせようとする母・・・
「この黒いTシャツを着ることはそこまで罪悪なのか」
とあくまで疑問なワシ・・・

ワシは考える。
もしワシがとび職だったら、
鳶職人の服を着て学校に行くことはそんなに恥ずかしいことなのか。
ラーメン屋の店主だったら
エプロンかけて学校行くことはそんなに恥ずかしいことなのか。
工務店の社長さんだったら、
よく見る工務店っぽい服で学校に来ているし、
代議士だったらきっと金バッチつけて学校来るぞ!!

ロックミュージシャンが黒いTシャツで学校行って何が悪い!!

もしワシの身体がピアスと刺青だらけで、
同じTシャツでも「Fuck You」とか書かれたものだったらさすがワシでも考えるが、

「ロック魂」のどこがアカンの?!!!

まあ敢えて言えばちょっと貧乏臭いだけである。
でも更に言わせてもらえば、

じゃあ貧乏のどこがアカンの?!!!

結局ワシには、着なれたこの服を着てはいけない理由が見つからないのである。
納得できないものには屈することは出来ない!!

それが「ロック道ではないのかい!!」

・・・と言いつつも、
そのまま家を飛び出して、学校に着く頃には少々弱気である・・・
息子の小学校が終わり、娘の中学校。
中学生の女の子と言えば一番多感な時期である。

許せ!父はロックに生きる者なのじゃ!
もしお前も星雲高校に入学することがあったら、
入学面談の時に胸を張ってこう言うのじゃ。

「うちの父ちゃんは日本一の日雇いミュージシャンです」

しかしよくよく思い起こしてみると、
別にこのTシャツにそれほど愛着があるわけでもない。
何のことはない、
実のところ着替えるのがめんどくさかっただけなのである。

そんなアホ親父の前で先生がしきりに娘のことを誉めてくれていた。
まあこんな時に人の子をけなす先生もおらんじゃろうが、
この先生が娘に対する愛情がひしひしと伝わって来る。

そう言えば娘の転校日を来月に延ばしたのも、この先生が
「来月文化祭があるので、転校はそれまで延ばすことは出来ませんか」
とおっしゃったからである。

先生と話している時に吹奏楽部の練習が聞こえていた。
そう言えば前回この中学校で講演をさせて頂いた時、
(我ながらいろんなことやっとるなあ・・・)
記念に吹奏楽部に何かお役に立つことをやってあげようと思ってたなあ・・・
娘がいるうちに吹奏楽部に何か残してあげられればよかったなぁ・・・

文化祭の練習でもしてるのだろうか、
思ってみれば、娘にとっては文化祭の日が最後の登校日、
この吹奏楽部の演奏を聞くのもその日が最後なんだ・・・

親バカとしてはちらっとこんなことも頭をよぎる。
「吹奏楽部がうちの娘のために何か演奏してくれんかのう・・・」
しかしそれはいくらなんでも吹奏楽部を私物化し過ぎている。
これでは背中の「ロック魂」に笑われる。

それにスケジュールを聞いたら吹奏楽部は非常に忙しい。
月末には体育祭がありその練習に忙しく、
終わったらすぐに吹奏楽のコンテストがあり、
それが終わってすぐ文化祭である。

そうじゃ!
考え方が逆なんじゃ!
娘のために何かするんじゃなくて、
「娘が世話になった学校やみなさんのために何か出来んか」
と考えるべきではないのか!!

コンテストにも出ると言うので出来れば優勝させてあげたい。
ありものの譜面ばかりで出場している他校と比べて、
書き下ろしの譜面だと点数も稼げるのではないか。

楽曲はオリジナルでもいいが、
出来れば有名な曲、
出来れば爆風の曲でワシが書いた曲が望ましい。

Runnerはベストじゃが、
転調が多く、難易度が高い。
もっと簡単で意味がある曲はないものか・・・

いい曲があるではないか!!
「<転校生は宇宙人」

そうだ!
この曲は娘がこの学校に残して行くのだ。
入学して半年で消えてゆく、
父親がちょっと地球人離れした女の子そのものの物語じゃないか!!

吹奏楽部だから詞は伝わらない。
でもアレンジでワシや娘の気持ちは伝わるのではないか・・・
それが音楽っつうもんではないか・・・

啖呵を切って学校を後にした。
大喜びでワシの申し出を受けてくれた校長はじめ、全ての先生方の期待を
背中の「ロック魂」が背負っていた。

帰ってすぐにザビエル大村の妻(生粋の爆風ファン)から楽曲を送ってもらった。
Bメロはほとんど忘れていたが、だいたい頭に叩き込んで銭湯へ。

そうそう、ワシ・・・よく風呂に入って物考えるのよね・・・
うちの実家の風呂、今壊れてるし・・・

そして譜面ソフトを立ち上げ、いざ入力開始!!

そうそう、ワシ・・・別に楽器がなくても譜面書けるのよね・・・
でも周りに音楽がなってると出来ないので娘の見てるテレビを無理やり消しちゃうのよね・・・

・・・本末転倒・・・

そして楽器構成を把握して譜面の枠組みだけをやっと作って唖然とした・・・
何と久々の20段譜面・・・

ワシ・・・かなり後悔・・・
でも今さら後には引けない。
今晩とりあえず徹夜してみる・・・

ロック魂Tシャツはそんなワシを嘲り笑うように
洗濯機の中で回っていた・・・

ファンキー末吉


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