ファンキー末吉とその仲間達のひとり言

----第17号----

2000/05/11 13:40

五星旗(Five Star Flag)が活動を再開し、大阪、四国、京都とツアーを回ってきた。
車に機材を積んで夜走りで行くのはX.Y.Z.と同じだが、
違うと言えばその機材の量と、移動日なく連続で入るライブである。

まあ基本はJazzなので何連チャンでも大丈夫なのだが、
移動はさすがにこたえる。
来る時なんて連休の大渋滞で15時間ですわ、ほんま。

そんなツアーの中の一本。
香川県に宇多津町と言う小さな町があるが、
今回この町の非常に立派なホールで演奏させてもらった。
わしらワンマンで600のキャパを埋められるほどのネームバリューはないので、
主催者達は、やはりやっきになって手売りでチケットをさばこうと努力してくれる。
当然地元だと言うことで同窓生にチケットを買ってもらうことになるのだが、
そうなると当然
「末吉が帰ってきとるんやけん同窓会しょうで(讃岐弁)」
と言うことになる。

ところが俺がまた同窓会と言うのに出たことがない。
生まれてこのかた年賀状を書いたことがないと言う筆不精と、
(それにしてもMailはマメに書くなあ・・・)
生来の芸能人扱いされ嫌いがたたって、結局顔を出すことがなかった。

また人間の記憶と言うのはアテにならないもんで、
また特に地元を離れて昔の交友関係と縁がなくなってる俺のような人間にとっては、
「久しぶり!○○です」
と言われてもこれがなかなか思い出せん。

ところが向こうはテレビとかでいつも俺の情報は目にし、耳にしているので、
何となくそのまま長く付き合ってる気になっている。

会っても思い出せんのよ、これが・・・

今回主催者の町役場に同窓生がいた。
高瀬くんと言って隣のクラスだったのだが、
彼が一番頑張ってチケットを捌いてくれたにもかかわらず、
当の俺は全く彼のことを覚えていない。
挨拶に行ったのだが、「悪い」が先にたって顔さえ正視できない。
そんな人たちがたくさんいる同窓会って・・・

と思ってたら出席してみたらそうでもないのよ。

女の子は、やはりお年を召すとお変わりになられるけど、
やはりよくよく見ると面影はあるし、
男どもに至っては、うちのクラスはオジン顔が多かったのか、
どうもあの頃の顔のまま、そのまんまである。

高瀬くんのことも徐々に思い出し、
「ああ、おったなあ、こんな奴」っつう感じになる。

ところが隣にどうも見覚えのありそうでなさそうな顔がある。
背がちっちゃくって、目が細くって、
よくあるマンガのキャラクターのような顔なのだが、
「3組だった亀井です」
うーん、亀井なあ・・・
そんな奴おったかなあ・・・

まあ追求しても「悪い」ので、そのままアホな話ばっか続けていた。

さてインターネットの話となる。
当然エッチページの話題となる・・・
すると亀井くんが意気揚揚と話に参加し出した・・・
「あれは一度はハマるんや・・・」
ちょっとはにかんだその表情と目の輝き・・・
「わしらの時代はプレイボーイとか平凡パンチしかなかったのに、
今日びの若い子らはどんな凄いんでもこなん簡単に見れるやからのう・・・」
哀愁を帯びたその語り口調・・・

「か、亀井ってひょっとして”エロ本屋の亀井”?」

おったおった・・・
人呼んで「エロ本屋の亀井」!
別に家業がエロ本専門店だったわけではなく、
単に普通の本屋だったのだが、
当時はプレイボーイとか平凡パンチを買うだけでも命がけだった田舎町で、
みんなの期待を一身に受けて、
家の本屋からエロ本を盗み出してはワシらに見せてくれてた亀井くんやないの!
わざわざ隣のクラスまで亀井くんのありがたいお話を聞きに行っきょったがな(讃岐弁)・・・

まあ亀井くんにしてみたら、俺なんかその中のただのひとり。
もしこうしてテレビとかに出る職業じゃなかったら
それこそ思い出すこともない存在であったことだろう。

いやーそれにしても若い頃に刷り込まれた記憶と言うのは恐ろしい。
特に下ネタ系はね。
おかげで同窓会に来てもないのに、
オナニーを教えてくれた鎌田くんの名前や顔まで思い出してしもた・・・
こんなことがなかったら、ひょっとしたら一生思い出すこともなかったかも・・・

ま、同窓会もええもんやね。

さて今日のお題、「旅芸人の一座」

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四国は宇多津と言う町に「四国健康村」と言う健康ランドがある。
香川県に行けば必ずここに風呂に入りに行くばかりではなく、
Funky Co.の社長の実家「綾御殿」に泊まれない時はここで泊まったりする。
(わしの実家はもう香川県にはないのよ)

まあだいたいはライブ終わって夜中にここ行って、
閉まりかけている食堂に無理言って酔いつぶれるまで酒を飲むのだが、
今回は一本昼間のライブがあったので、
これ幸いとめずらしく昼間っから風呂三昧としけこんだ。

このテの大きな温泉場(みたいなもんやね)には、
往々にして大宴会場かなんかあってそこで歌謡ショーかなんかやっとるもんだが、
今月の健康村の出し物は「新川博之劇団」であった。

ポスターがまたシブい!
着物を着流した座長がビシっとミエを切っている。
「時代劇かなあ・・・」
7時からの公演を心待ちにしながら、
薬草風呂に浸かる。
「薬が浸透してピリピリするところがありますが、そこが身体の悪いところです」
と説明書きされているが、みんながみんな
「ち○ぽ○がピリピリするー」
と絶叫。
そりゃ粘膜には一番染みるっつうねん!

さて7時から数分送れてショーが始まった。
お芝居かと思ったら、それは昼の部だけで、夜は「歌と踊りの歌謡ショー」となる。
着物を着た男女が舞台に上がって
演歌やら何やらに合わせて日本舞踊のような殺陣のような踊りを踊る。
歌い手が変わるごとに、それぞれに陰アナが玉置浩のような講釈を述べるのだが、
「うーむ、そうするとこの喋ってる人も一緒に旅にまわってるわけね」
とわしらの興味はそっちに行く。

「それではお待たせしました。当劇団の研修生で御座います。
○○智哉(すまん、苗字忘れた)が踊ります。トモちゃーん!」
なんか色白の男の子が出て来る。
「けんきゅーせー?!」
わしら顔を見合わせる・・・
「当劇団研修生、○○智哉。歌を踊りを毎日勉強しております。
一生懸命頑張ってます。当年とって15歳!」
「じゅーごさい?!」
学校はどないしてんねん!学校は・・・
「ああ言う人たちはな、旅先で次の公演場所決まったらすぐ転校手続きしてな、
子供の頃から転校、転校の旅人生や」
キーボードの進藤くんが物知りげに言う。

舞台では何やら日本舞踊やら殺陣やらわからん踊りが繰り広げられる。
するとトモちゃん、踊りながら舞台の最前列に歩み寄ってひょいと方膝でちょこんと座る。
すると最前列のお姉さんがひょいと着物の裾に封筒を入れるのである。

「おひねりー?!」
わしら顔を見合せる・・・

「お待たせ致しました。当劇団の副座長、新川博也が歌います」
ちょっとぽちゃっとした感じの男優が出て来る。
しかしどことなく色っぽい。
バシっとミエを切った時の流し目など、さすがと言う感じである。
当然ながらおひねりの嵐である。
「ええなあ、わしらのステージもおひねり制にしようで・・・」
誰がくれんねん!

演目はどんどんと進み、
新川笑也やら新川博なんたらやらいろいろ登場。
「やたら新川が多いなあ・・・」
「当たり前やんか、家族や、家族」
ツアーに同行したラグタイム・ブルース・デュオ「三井はんと大村はん」
の大村はんが知った風なことを言う。
「そうかぁ、家族でまわっとるんかぁ・・・」

途中、座長も歌を披露し、立派なおばはん等も出て来て、
しまいには座長とおばはんがふたりで座って話しを始めた。
「はい、当劇団の副座長、新川博也の写真入り飾りうちわ、2500円で販売しております」
物販の説明を始める。
「じゃああれがお母さんかなあ・・・」
ベースの仮谷くんも興味津々。

そしてビデオ。
座長自ら宣伝文句をたれる。
「第一部は○○劇団に新川博也が参加して演ずる○○。
そして2部は歌と踊りの歌謡ショー」
ほう・・・
となりのおばはんが次々とビデオを手に取って客に誇示する。
「そしてお次、第一部は○○劇団に新川博也が参加して演ずる○○。
そして2部は歌と踊りの歌謡ショー」
ほう・・・
「そしてお次、第一部は○○劇団に新川博也が女形で演ずる○○」
ほう・・・女形かい・・・
「そして2部は歌と踊りの歌謡ショー」
また「歌と踊りの歌謡ショー」かい!・・・
「そしてお次、第一部は○○劇団に新川博也が参加して演ずる○○。
そして2部は・・・」
「歌と踊りの歌謡ショー!またかいな!」

香川県ははっきり言ってギャグのレベルは低い。
ボケに突っ込むのはうちのテーブルの関西人だけである。
それにしても女形ねえ・・・
そりゃあれが女形やれば色っぽいやろうなあ・・・
「今こうやって喋ってる間に着替えとるんやで」
ギターの岡崎はんが知った風に言う。

「お待たせしました。副座長新川博也が女形で座長新川博之と踊ります。
○○○○!(タイトル忘れた・・・)」

じゃじゃーん!
出て来た博也くんはまたそれはそれは色っぽい・・・
「ひろやー!」
思わず掛け声をかけるわし。
「当劇団副座長、新川博也。来月で17歳になります」
じゅうななさいー?!
「学校はどなんしとんねん、学校は!」
艶やかに舞い、踊る女形の博也くん。
もちろん一番前に座り込んでご祝儀を受け取る。
こりゃおひねりも出すわなあ・・・
ある女性は博也にかんざしを手渡す。
博也はそれをひょいと自分の髪に刺し、舞い、踊る。
ほう・・・
思わずうっとりして見入ってしまったわしら・・・

ショーが終わって宴会場から出ると、
出口のところで座員自らグッズを売っている。
博也くんも女形のまま出口で立っている。

話し掛けたいのはやまやまだが、
そうするとグッズのひとつも買わなければ悪いので、
貧乏なわしらは後ろ髪を引かれつつ2階の食堂に行って酒を飲む。
「芸やな・・・立派な・・・」
誰ともなくそうつぶやく。
「三井はんと大村はん」にここで営業させようかと思うとったけど、
とてもやないけど太刀打ち出来んわ・・・

「旅から旅への旅芸人か・・・」
家族親族引き連れて、全国津々浦々と回る人生・・・
あいつら物心ついた時からずーっとそんな人生なんやろなあ・・・
しかしよう考えたらわしらバンドマンの人生も同じもんかも知れん。
グッズ売って生計立てるのもロックバンドと同じやないかい。
違うとしたら家族親族引き連れてないっつうことかな。
よし、うちのガキが大きくなったら、
学校なんか行かんでええから世界中連れて回っちゃれ・・・

そんなことを考えながら飲み続けてたら、
お勘定がひとり4000円にもなってもた。
「しもた!博也くんのビデオが一本買えたやないかい」

新川博之劇団、今日はどこでやってることやら・・・

ちなみにわては九州でX.Y.Z.のツアー・・・

ファンキー末吉


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